学生選手権 2021 レポート①
医学部5年の三井です。
この度KUCCはホームページを改装することになりまして、これが初投稿になっているかと思います。恐らく後輩たちがこれを機に頻繫にサイトを更新してくれることでしょう。昨年末に行われた学生選手権2021についての記事になります。
ちなみにこの大会の自戦記は2022年2月発行のNCSレターにも寄稿していますのでそちらも是非ご覧ください(NCSレターは優勝を決めた大一番のR5で、本記事は別の試合です)。
学生選手権とは
毎年12月に学生チェス連盟が主催している大会です。2日間の6ラウンドで学生チャンピオンの称号をかけて戦います。
ちなみに学生チェス連盟代表かつこの大会を運営してくれたのは当サークル3年の青山でした。お疲れ様でした!
自戦記解説
NCSレターにはR5の試合を載せていますがここではR4の事前準備が上手くはまったattacking gameを紹介します。
Mitsui, R - A. J, Tokyo 2021
1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Bb4 4. e5 c5 5. a3 cxd4!? 6. axb4 dxc3 7. Nf3 cxb2 8. Bxb2

French Winawerのサイドラインでした。事前にこのラインになる可能性が高いことが分かっていたので"Grandmaster Repertoire 1.e4"の推奨ラインを勉強していました。白は1ポーンを捨てますが、展開の速さや駒のアクティブさで十分以上の代償を主張していると思います。
より正確に言うと通常のFrench Winawerストラクチャーよりもダブルビショップが活きやすい局面になっているのではないかと個人的には解釈しています。
8... Ne7 9. Bd3 Bd7 10. O-O

白の駒はキングサイドを狙う準備は万全です。例えば10...0-0?? 11. Bxh7+! +-とグリークギフトが決まります。いろいろな受けが一応考えられますがRa1-a3-h3 (or g3)というルークリフトが使えることもこの局面の白の有望さを表していると思います。
10...Ng6 11. b5 Nf4?
強力な白の白マスビショップを消してしまうことはもちろん理想的にはしたいですが、ここまで展開に差がついてしまうと白マスビショップ抜きでも攻撃が十分決まります。
白はBf1-d3と1手で出しただけですが黒はそのビショップを消すのにNg8-e7-g6-f4-xd3と4手かけています。さらに白は交換の際にクイーンを展開することもできています。
序盤に同じ駒を何回も動かすと良くないというのは良く言われる原則ですね!
12. Ba3 Nxd3 13. Qxd3 a6 14. bxa6
bxa6 15. c4!

相手のキングを攻める準備を整えて、キングをセンターに閉じ込めたらもちろんセンターを開くのみです!展開でリードしているときは局面を開くべき、というのも良く言われますね!
15... dxc4 16. Qxc4 Bb5 17. Qg4
黒は...Bb5の串刺しを頼りにしていたのだと思いますが、これ以降、展開の差のおかげで白には自然発生的にタクティクスが存在します。
17... Rg8 (17...Bxf1? 18.Qxg7 +-) 18. Rfd1 Nd7 19. Ng5 Be2!?

19.Ng5の時点で次のNxe6への受けがないと判断していて、19...Be2は思いがけない手でなるほどと思いました。ただ幸いにも白勝勢であることには変わらず、勝ちへの変化はいくつかありました。
20. Qxe2 Qxg5 21. Rxd7! Kxd7 22. Qd1+

22...Kc8 23. Qc2+ 1-0
最後は他のチェックでも同様に勝ちですが、22.Qd1+ は22...Ke8 23.Qa4+の可能性を持っていること、23.Qc2+ではなく 23. Rc1+ Qxc1だとクイーンを捨ててまだ試合を続けるチャンスが残ってしまうという点でそれぞれ冷静にベストな選択ができたと思っています。
展開が遅く、センターに取り残されたキングを上手く仕留めることができて印象的な1局です。
結果
5勝1分の5.5/6で悲願の優勝をすることができました!過去には悔しい結果もあり、あまり良い思い出のない大会でしたがこのような結果を残すことができて良かったです。
来年卒業なのでチェスにかけられる時間は残り少しではありますが、楽しんでチェスを指していきたいと思います (Tata Steel 2019でのKramnikが目標)。
